健康美容の広告表示・薬事法

Q薬機法(薬事法)と健康食品等

A

第1 薬機法と健康食品

1 薬事法から薬機法へ

薬機法は、薬事法の改正法です。薬事法というと聞き覚えがある方も多いかと思います。平成26年11月に改正されて法律の略称も変更されました。しかし、特段、広告・表示に関する規定は旧薬事法と変わるところはないと考えられています。

2 旧薬事法をベースラインに

承認されていない医薬品や医療機器について、効能、効果又は性能に関する広告はしてはならないとされているのです(68条)。その処分は行政処分ではなく、刑事罰で対処されるものとされているので、特に注意が必要です。ちなみに2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとされています(85条)。

一例を挙げると、清涼飲料水について、ガンに聴くと広告したスーパー会社と担当社員が、薬機法違反の疑いがあるとされています。

第2 「医薬品」か「食品」か

1 当たり前ですが「医薬品」に該当すれば、規制が厳しくなるのですから「医薬品」に該当するか否かがポイントとなります。

この点の判断基準では、昭和46年6月1日厚生省依命通知(いわゆる46通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」)

・医薬品に利用される者の成分本質(原材料)からみた分類

・医薬品的な効能効果からの分類←ここが重要!!66条にも違反!!

・医薬品的な形状からの分類

・医薬品的な用法用量からの分類

-から総合的に検討することになっています。

2 広告・表示は、キャッチーなコピーとともに載せることになります。したがって、「効能効果」、いいかえると「絶対にガンが治る不思議なサプリです!」というようなものです。さすがにこれは、どなたでも、医薬品の効能効果を標ぼうしています。46号通知では、食品であっても、一定の場合、医薬品的な効能を標ぼうしているものとみなす、とされています。違法となる表示の一例としては、「よくみるような気もする」、「ガンが良くなる」「眼病の人のために」「便秘がなおる」「便秘にききます」というものです。

3 具体的には、医薬品に利用される物の成分本質からみた分類、医薬品的な効能効果からの分類、医薬品的な形状からの分類、医薬品的な用法用量からの分類から総合的に考量されます。最終的な「法的判断」自体がブラックボックスになっているといえるので、法律顧問などの法律意見書などを得ておくなど法務予防政策をとっておく必要があります。顧問弁護士はこういうときにも活動するといえます。

4 疾病の治療又は予防を目的とする効能効果

いちばん初歩的な内容であると思います。医薬品の承認前のものとして違法とされる可能性が高い。

・糖尿病がよくなる

・高血圧によくきく

・動脈硬化の人に

・十二指腸潰瘍の予防

・肝障害

・胃障害をなおす

・ガンがよくなる

・眼病の人のために、便秘をなおる

5 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果

46通知において、問題になりやすいのは、栄養補給、健康維持に関する表現はこの限りではない、とされています。ですから、疾病や予防と補給、維持の違いが問題になりそうです。ただし書きがあり、疲労回復は良いとされている。よく聞いたようなフレーズ。

・疲労回復

・体力増強

・食欲増進

・老化防止

・勉学能力を高める

・精力をつける

・新陳代謝を盛んにする

・胃腸の消化吸収を増す

・病気に対する自然治癒能力が増す

例えば食欲増進の場合は、食欲が不振な人が買うことになりますが、食欲不振の背景には病気があることがありますが、胃痙攣などと同じくそれ自体は「症状」の名前にすぎないのです。ですから、「食欲不振」というのも病気の抽象化というアプローチです。そして、どこまで抽象化すると、身体の「組織機能」の「一般的」増強といえるかです。

また、胃腸の消化吸収自体はたしかに身体の一般的機能ですが、これの「不吸収」というのはもう病気というような気もします。あくまでわずかに調子が悪い人に対して、一般的増強をさしています。しかし、簡単に病名が連想できてしまうようなものの治療又は予防を目的、ないし一般的増強、健康維持等に関する表現はこの限りではありません。また、病気に対する自然治癒力はその検証がされているのか、という問題もあるので、薬機法の問題に加えて景品表示法上の問題も検討しておく必要があるでしょう。ですから、国会で話題になったように、「YES!〇〇」と効用と無関係の表現にせざるを得ないのは、本件のような薬機法と健康食品に関しての問題も背景にあるでしょう。民進党の議員はそういうことすら知らないのです。ですから、効能効果のキャッチコピーが似たり寄ったりになる中での独自色を出す必要が出てくるのです。

6 医薬品的な効能効果の表示

これは具体的なことを説明するのは省略しますが、脱法的なものだ、と常識的に考えれば、分かるのですが、意外なものも存在します。しかし、これは考えてみると、「薬」であると連想させるような表現はダメと考えるとわかりやすいかもしれません。あくまで厚生労働省が「薬」と認めないとダメなわけです。よく、キャッチフレーズが暗示しているなど。暗示の方法はいろいろあるので、例えば漢方などがある。これは要注意。学者の学説を引用する。実際効くかそうでないかは関係がない。

7 未承認医薬品は医薬品の承認をとるか、特保、機能性表示食品としてどういったうたい文句で可能か、販売することかを検討する。

経営者の中には、A製品は、効果の実証ができているのに、薬事法はおかしな法律だ!という人もいます。しかし、薬機法上の未承認医薬品が効能効果をうたうことができないのは、商品に効能効果が実際に存在していてもそれを広告・表示することが禁止されているからです。また、効能効果といっても、全員に妥当するのかというサンプリングの問題もあると思います。

その点で、もし、多くの人に効果があるというのであれば、景品表示法の虚偽表示規制とは異なります。

もしそうであれば、未承認であるから問題であるので、医薬品の承認を受ける、特保、機能性表示食品として販売することが可能か、を検討することになります。

第3 薬機法上許される広告表現

1 46通知にいう問題は「効能効果」を広告宣伝することは違法となります。しかしながら、栄養補給、健康維持、栄養分表記は、薬機法上問題ありません。

2 ダイエット、痩身などは問題になりやすくなりやすいといえます。

わかりやすくいえば、ざっくりいえば抽象的な説明ほどリスクが少ないわけですが、詳細に書けば書くほど薬機法の効能効果に結びつきやすい、という点を頭に置いておく必要があります。おながだけやせる!、ダイエットとの関連で「体内の脂肪の分解、排せつ」「体内組織、細胞等の機能の活性化」「体質改善」などと独立していればよさそうでも〇+×=違法ということになります。この場合、薬機法違反となる。カルシウムが入っているはいいが、カルシウムが入っているからガンにきくと書いたりしてはいけない。

ダイエットに関しては、厚生労働省の通知が昭和60年にそれのみで出されていますので、よく見られているということを意識した方がいと思われます。総合判断されるので、言葉だけではダメ。

3 最近は高齢意識

最近は、高齢者向けの販売として、膝、腰を丈夫にする、美肌、美白になる、シミ、肌荒れをなくすという表現は、特定部位の機能改善を表現したものとなり、身体の組織機能の一般的機能の増強にはなりません。

4 足し算次第では、セーフの「栄養補給」「ビタミンが豊富」という表現も、美肌にビタミン栄養を豊富に供給!!となると、ダメになる可能性があるといえます。難しい問題でありますが、日本では、行政庁にきいてみても「諸事情を総合的に判断して社会通念上の相当性があるか否かで判断しています」という回答しか得られません。まさに、やってみてダメな人は逮捕される社会です。ですから、リスクがあっても予防法務を尽くしていたといれば不処分や不起訴になるかもしれません。それだけの準備をしていたことが重要と考えられます。すなわち、薬機法上、適法か否かは、その広告・表示全体で総合的に与える印象で判断されることになります。ですから、局所的な文言を切り取って、この文言はOKとインターネットのホームページに書いてあったという弁解は全く予防法務をしていない人という評価をされてしまう可能性があります。特に、文言だけではなく、写真、図画、付加的表現として、全体として薬機法の効能効果規定に反しないかをみる必要があります